マインドフルネス
みなさん、「マインドフルネス」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?今回は最近よく耳にするマインドフルネスについてまとめました。
マインドフルネスとは?
マインドフルネスとは、過去や未来ではなく「今」に焦点を当て、自分の思考や感情を批判せずに観察する心のトレーニング法です。マインドフルネスはストレスや不安を軽減する効果があり、実際にうつ病・不安障害・慢性疼痛などの治療にも活用されています。
マインドフルネスの歴史
マインドフルネスの起源は、2500年以上前の古代インドの仏教瞑想にあります。「マインドフルネス」という言葉は仏教用語の「サティ」の英訳で、「覚えていること、心に留めておくこと」を意味します。仏教の瞑想法は、紀元前5世紀頃に釈迦(ブッダ)によって確立されました。その後インドからアジア各地に広まり、様々な形で発展していきました。 現代的なマインドフルネスは、1979年にアメリカの医師ジョン・カバットジン博士が仏教瞑想を医療に応用したことが始まりです。その後も米国を中心に科学的・医学的な研究が進み、マインドフルネスによるストレス低減効果が実証されていきました。これにより、マインドフルネスは宗教的な文脈を離れ、科学的なメンタルトレーニング法として広まりました。
マインドフルネスを取り入れた精神療法の効果
科学的研究によって、以下のような効果が実証されています。
- ストレスや不安の軽減
- 脳の偏桃体(恐怖や不安などの感情をつかさどる部位)の活動を抑制し、ストレスホルモンであるコルチゾールの分泌を減少させます。
- 集中力と注意力の向上
- 前頭前野の活動を活性化させ、集中力や注意力を高めます。マルチタスク環境でも1つの作業により集中できるようになります。
- 感情のコントロール能力の向上
- 感情の客観的にとらえる能力が高まり、怒りや悲しみなどの感情をコントロールしやすくなります。前頭前野と偏桃体のつながりが強化され、感情反応(感情に左右されてしまうこと)が抑制されます。
- 睡眠の質の改善
- 副交感神経の活動を促進し、リラックス状態に導きます。
- 痛みの緩和
- 脳の島皮質の活動を抑制し、慢性的な痛みを和らげる効果があります。
- 免疫力の向上
- 白血球数やNK細胞の活性度を高め、感染症にかかりにくくなります。
- 自己肯定感の向上
- ありのままの自分を受け入れる力が養われ、自己肯定感が高まります。
- 創造性と問題解決能力の向上
- 脳の特定領域の接続性が向上し、学習や記憶、創造性が促進されます。
これらの効果は、短期的には数週間から数カ月で現れ始め、長期的な実践でさらに強化されます。
日常におけるマインドフルネスの取り入れ方
マインドフルネスにはいろいろなやり方がありますが、今回は初心者の方でもやりやすい方法を記載しました。あらかじめ、5~10分(慣れてきたら15~20分)のタイマーをセットしてから始めてください。
- 良い姿勢で坐る
- 床に座布団や坐布を置き、その上に胡坐をかいて腰をかけ、背筋を伸ばして座ります。椅子や正座でも構いません。手のひらを下に向け、膝や太ももの上に置き、背筋を伸ばして肩の力を緩めます。目を瞑ってリラックスします。目を開ける場合は、伏し目がちにして1.5~2m先の床をぼんやり眺めます。この時、身体の感覚に意識を向けましょう。手や太もも、お尻が触れている感触を感じ取りましょう。
- 自分の呼吸に意識を置く
- 今まで、無意識に行っていた自分自身の自然な呼吸に意識を置きます。おなかや胸の動き、鼻から出入りする空気の感覚に集中します。
- 感情や思考が浮かんでも、それを追わずに呼吸に戻る
- 感情や思考が浮かんできたと気づいたら、それらを避けようとせず「今自分は○○と考えている」というように客観的に観察します。その後、優しく呼吸に戻ります。眠くなってきたら、目を開けたり姿勢を正します。余裕のある方は頭のてっぺんから足先まで、順に体の各部位の感覚に注意を向けてみましょう。緊張している部分があれば、意識的に力を抜きます。
- 終了
- タイマーがなったら深呼吸を数回してからゆっくりと目を開けます。マインドフルネスを始める前後の気分や体の変化を感じ取りましょう。すべて終えたらゆっくりと体を動かし、日常の意識へ戻ります。
マインドフルネスは、心身の健康を促進する効果的な方法です。日々の実践を通じて、ストレス管理や集中力の向上など、様々な恩恵を得ることができます。ぜひ、皆さんも試してみてください。また、当院こころの診療所 築地・新富町では、様々な精神疾患の治療を行っています。お困りの症状がある方は、お一人で抱え込まず当院へお気軽にご相談ください。
みなさまによりよい生活を送れるようにお手伝いしていきたいと思っております。
こころの診療所 築地・新富町 スタッフより