軽度認知障害(Mild Cognitive Impairment;MCI)の症状について
近年軽度認知障害という言葉が認知されるようになりました。
- 直近の出来事を忘れる
- 公共機関などの利用が難しくなった
- 計算など複雑な処理ができなくなった
近年軽度認知障害という言葉が認知されるようになりました。
軽度認知障害はPetersenらが古くは1999年に提案した疾患概念であり
- ①本人や家族から認知機能低下の訴えがある
- ②認知機能は正常とはいえないものの認知症の診断基準も満たさない
- ③複雑な日常生活活動に軽微な障害はあっても基本的な日常生活機能は正常
の3点が挙げられます。
65歳以上の有病率は10-20%にも上ると言われています。軽度認知障害はアルツハイマー型認知症などの前駆症状としても捉えられてきましたが、報告に差はあるものの17-32%の割合で正常な認知機能に戻るため、一概に認知症の前駆状態とは言えないことが近年報告されています。しかしながら、早期発見による早期介入は喫緊の課題でもあります。
治療について
軽度認知障害から認知症への移行のリスクを軽減するには生活習慣の改善が挙げられます。メタボリックシンドローム、喫煙、飲酒などは移行のリスクを高めるため、日常の身体活動や運動量を増加させることも重要です。
つまり、健康的な社会生活を送ることを目標としたお手伝いを行います。
また、認知症にみられる認知症の行動・心理症状(BPSD:Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia)が軽度認知障害の時点から見られることが近年知られるようになってきました。
BPSDには攻撃性・抵抗・脱抑制などが挙げられ、心理症状としては、妄想・幻覚・抑うつ・不安などが挙げられますが、軽度認知障害の方で問題となるのは抑うつ・不安といった症状です。
これらに対する適切な介入を行わないと、認知機能の低下が進行してしまうため、これらに対する治療も行います。
【参考文献】
Petersen RC, et al: Mild cognitive impairment: clinical characterization and outcome. Arch Neurol 56(3):303-308, 1999.
Langa KM et al: The diagnosis and management of mild cognitive impairment: a clinical review. JAMA 312(23):2551-2561, 2014.
Rosenberg PB et al., Mild cognitive impairment: searching for the prodrome of Alzheimer's disease. World Psychiatry 7(2):72-8, 2008.
Inamura K, Shinagawa S, Tsuneizumi Y, et al. Sex differences in the severity of neuropsychiatric symptoms and their relationship with clinico-demographic and psychosocial factors in patients with amnestic mild cognitive impairment and mild Alzheimer's disease. Aging Ment Health. 2020;24(3):431-438. doi:10.1080/13607863.2018.1539834